トライアンフから新たに登場した『トライデント800』はミドルクラスに位置づけられるロードスターだ。カウルを持たないネイキッドらしい軽快さに、「TRIDENT=三又の矛」という伝統あるネーミングが与えられた一台である。
2026年型で大きく進化した『トライデント660』の兄貴分という立ち位置だが、実際に触れてみると「ただ排気量を上げました」という話ではないことがすぐに分かる。
◆個性的な見た目と、扱いやすい扱いやすい3気筒
トライアンフ トライデント800
まず見た目が個性的だ。未来的な雰囲気の中に丸型ヘッドライトや柔らかな曲線が効いていて、どこか英国車らしい温度感がある。660と比べると全体に筋肉質かつスポーティで、並べるとキャラクターの違いがはっきり見えるが、それでいて丸っこいシルエットが親しみを感じさせる。
搭載されるのは今やトライアンフのアイコンとなった感がある水冷並列3気筒エンジンで、排気量は798ccにスケールアップ。最高出力は115psと数字だけ見ても十分だが、真価はその出方にある。
トライアンフ トライデント800 低回転から滑らかにトルクが立ち上がり、中回転は力強く、高回転でさらに弾ける。3気筒ならではのハスキーヴォイスに、高周波の吸気音が重なるサウンドが最高に心地よく、つい無駄に回したくなってしまうほど。
走り出してまず感じるのは、とにかく扱いやすいこと。2000rpm前後からでもスロットルをためらわずに開けられる安定感があり、スロットル操作もギクシャクしない。今回の海外試乗会の舞台となったキプロス島の狭い街中から郊外のワインディングまで、2~4速を中心にほぼ走れてしまうので、スポーティなのに楽なのだ。
◆アップライトで足つきも楽、ハンドリングはニュートラルで軽快
トライアンフ トライデント800 ポジションはアップライトで視界が広く、シート高も控えめ。足着き性が良く、リラックスできる。ホイールベースは1402mmと短めで、タイトコーナーではクルクル向きを変えるが、低速トルクがしっかりあるのでUターンや取り回しも楽。街中で気を使わなくていいのは、日常的に乗るうえで大きな美点だ。
ハンドリングはニュートラルで軽快。それでいてフロントの接地感が分かりやすく、サスペンションがしなやかに路面を捉える安心感がある。装着されるミシュラン・ロード6も好相性。途中で大雨に降られるなど、天候の変わりやすい峠道でも不安は少なかった。電子制御も自然で、レインモードでも過剰に介入しないあたりは好印象。このエンジン、もともとのトラクション性能が高いと実感できた。
トライアンフ トライデント800 また、ブレーキもタッチが分かりやすく効きも穏やかで、コーナー進入での速度調整がしやすい。アップ&ダウン対応のクイックシフターもスムーズで違和感もなく、旋回中のギアチェンジが足元だけで完結するという素晴らしさ。
◆頑張らなくても気持ちいい、アーバンロードスター
さて、最後に立ち位置を整理しておくと、同じ3気筒でもスポーツ全振りの『ストリートトリプル765 RS』が「攻めたい人向け」だとすれば、トライデント800はもっとフレンドリー。かといって大人しすぎるわけでもなく、「元気に楽しみたい人向け」の絶妙なポジションを見つけた印象だ。これが660からのステップアップなら、エンジンの余裕と走りの濃さはすぐ体感できるはず。
見た目スマートで軽快で扱いやすく、それでいて走りもちゃんと楽しい。そして、街乗りからショートツーリングまで守備範囲も広い。トライデント800は「頑張らなくても気持ちいい」を地でいく、今どきのアーバンロードスター。こういう“ちょうどいいミドル”、実は一番長く付き合えるかもだ。
トライアンフ トライデント800 ■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★★
佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。




