HKS「ハイパーマックスS」進化版を試乗検証! 箱根で体感した驚く進化の核心とは

HKS「ハイパーマックスS」進化版を試乗検証! 箱根で体感した驚く進化の核心とは
HKS「ハイパーマックスS」進化版を試乗検証! 箱根で体感した驚く進化の核心とは全 59 枚

東京オートサロン2026で発表されたHKSの主力車高調「ハイパーマックスS」のデリバリーが本格化。試乗会ではトヨタ『ヴェルファイア』、『GRヤリス』、『GR86』の3車種に乗り、その進化を確かめた。

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HKSのハイパーマックスシリーズは1998年に登場したオリジナルのショックアブソーバー&スプリングキットだ。HKSは発売より5年ほど前からフォーミュラ用サスペンションの研究開発を始めており、サスペンション開発の歴史はじつに33年にもなる。

HKS「ハイパーマックスS」HKS「ハイパーマックスS」

ハイパーマックスにSシリーズが登場したのは2021年。それまでのハイパーマックスは、マックスIV GT、マックスIV GT 20 SPEC、マックスIV GT Spec-A、S・スタイルLという4シリーズが存在していたが、この4シリーズを統合してハイパーマックスSとした。

4シリーズはそれぞれ特徴を持ったモデルだったが、性能的にオーバーラップする部分もあり、ユーザーにとっては選びにくさもあった。そこで、それぞれの長所を統合することで総合性能を高めるとともに、選びやすい仕様へと進化させたというわけだ。

ハイパーマックスSはストリート向けで、2022年にはサーキット走行も視野に入れたハイパーマックスRが追加されている。ちなみにハイパーマックスSとハイパーマックスRの市場シェアは7対3となっている。

◆HKS ハイパーマックスSの特徴と開発思想

HKS「ハイパーマックスS」HKS「ハイパーマックスS」

HKSのショックアブソーバーは単筒式構造を採用しており、もちろんハイパーマックスSも同様だ。単筒式は複筒式に比べて内蔵するピストン径を大きく設計できるため、減衰力の設定範囲を広く取りやすい。また、オイルが入るシリンダー部分が外気に触れやすく冷却性に優れる。同一の筒内にガス室を設けられるため、ストラット式での倒立配置が可能になるのもメリットだ。とくにストラット式での倒立配置は、サスペンションのねじり剛性や横剛性を高めやすく、さらにオイルの入ったシリンダー側が上部にくるためバネ下重量も軽くできる。結果としてハンドリング向上も期待できる。

HKS「ハイパーマックスS」HKS「ハイパーマックスS」

HKSでは3軸の計測器を導入してショックアブソーバーのテストを行っているが、実車テストも徹底している。

クルマはプラットフォームが同一だとショックアブソーバーの形状が共通となることがあり、同一形状のショックアブソーバーが使える場合は実車テストを省略するメーカーもあるという。しかしショックアブソーバーの形状が同じでも、ブレーキラインやABSセンサーが干渉することがあるため、HKSではそうしたトラブルを避ける意味でも実車テストを欠かさない。

HKSは静岡県富士宮市の本社工場でショックアブソーバーもスプリングも自社製作している。このためセッティングのために異なるレートのスプリングが必要になった場合でも数時間で入手可能。緻密なセッティングを繰り返せるのも大きな強みだ。

HKSではハイパーマックスSの開発にあたり『走り心地』をキーワードに掲げている。走り心地とは単に乗り心地が快適という意味ではない。ゴツゴツ感や初期入力での質感を改善しつつフラットライドを実現し、走る楽しさと快適性を両立しながら気持ちよく曲がれることを目指している。

◆マイナーチェンジで進化した機能と改良ポイント

HKS「ハイパーマックスS」HKS「ハイパーマックスS」

今回のマイナーチェンジについて少し説明しておこう。まずは機能面だ。ハイパーマックスSは30段の減衰力調整を可能にしているが、その調整を担うのがニードルというパーツ。このニードルをオイル流路に開けられた穴へ差し込む量によって流量を調整し、減衰力を変化させている。従来のニードルは締め込んだ際に強く入りすぎてしまうことを懸念して段付き加工されていたが、新たに採用されたワイドレンジニードルは穴の部分の面粗度を調整することで段付き加工を廃止し、よりワイドに減衰力を調整できるようにしている。

ハイパーマックスSはプリロードバルブ(PVS)といって、コーナリング時など低速域でしっかりとした減衰力を発生させる構造が採用されている。今回のマイナーチェンジではこのプリロードバルブを強めに働かせることで、よりしっかりしたハンドリングを実現した。

HKS「ハイパーマックスS」HKS「ハイパーマックスS」

HKSのサスペンションキットにはバンプラバーが採用されていることでも知られている。バンプラバーはサスペンションが大きくストロークした際に作用するパーツで、硬さだけでなく初期の当たり方が大切だ。バンプラバーに当たった瞬間に急激に硬くなると、タイヤのグリップが失われることもある。今回はバンプラバーの形状なども車種ごとに見直されている。

また、ゴム部品にも改良が施された。具体的にはダンパーのダストブーツとスタビリンクのブーツだ。ゴムの劣化には大気中のオゾンが大きく関わっている。今回の改良では耐オゾン性を向上させ、保証期間の3年6万kmをはるかに上回る耐久性を確保している。

HKS「ハイパーマックスS」HKS「ハイパーマックスS」

機能に直接関係しない部分では、トップマウントを従来のヘアライン加工からショット処理へ変更したほか、ラベルをゴールドとしてマイナーチェンジモデルであることを強調。さらにスプリング伸縮時の回転力を逃がすために採用されているインシュレーターも黒からゴールドへカラーチェンジした。加えてスプリングにはバネレートを表記し、使用しているスプリングレートがひと目で分かるよう工夫されている。

◆ヴェルファイア試乗インプレッション

トヨタ ヴェルファイア HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ ヴェルファイア HKS「ハイパーマックスS」装着

試乗車として用意されたのはヴェルファイア、GRヤリス、GR86の3車種。最初に乗ったのはヴェルファイアだ。これが驚くほど乗り心地がいい。本来HKSとしては「走り心地がいい」と言ってほしいところだろうが、まずは快適な乗り心地であることを伝えたい。ハイパーマックスSは減衰力を30段で調整可能。試乗車のヴェルファイアはちょうど中間となる15段に設定されていた。つまり、この状態を基準に柔らかくも硬くもできるというわけだ。

ミニバンはスライドドアや大きなバックドアを持つため、足まわりをしっかりさせようとするとボディに負担がかかり、ギシギシと家鳴りすることがある。しかしこのヴェルファイアにはそうした不穏な雰囲気が皆無。クルマ全体が引き締まったままで、しっかりとダンピングが効いている。段差乗り越え時のショック吸収性は格別で、ノーマルのヴェルファイアより突き上げ感がない。装着タイヤは245/40R21で、ノーマルの225/55R19と比べると2ステップ広く薄くなっているが、それを感じさせないのだから驚きだ。

トヨタ ヴェルファイア HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ ヴェルファイア HKS「ハイパーマックスS」装着

さらに印象的なのがコーナリング時の安定感の高さ。サスペンションを交換すれば走りがよくなるのは当たり前と思っている方も多いだろう。それは確かに正しいが、それ以上に大きいのが、より高性能なタイヤを使えるようになることだ。前述のように装着タイヤは2ステップ広く薄い。それでもしっかり受け止められる性能を得られるのは、サスペンションをグレードアップする大きな利点といえる。

トヨタ ヴェルファイア HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ ヴェルファイア HKS「ハイパーマックスS」装着

アルファード&ヴェルファイアは残価設定型クレジット、いわゆる残クレで購入しているユーザーが多いかもしれない。このためチューニングへの注目度は低く、半ばあきらめているユーザーも少なくない。一方で残クレの期間設定は3年から5年が一般的だ。現行のアルファード&ヴェルファイアは2023年6月発売なので、初期に3年契約で購入したユーザーはそろそろ残クレ期間の終了を迎え、買取りか返却かのタイミングに入る。返却されたクルマが中古車市場に多く流通するようになれば、中古車として購入する前提で自由にチューニングを楽しみたい層が動き出すはずだ。これまでチューニング対象ではないと考えて買い控えていた層も活発になるだろう。そうした流れの中で、今回のハイパーマックスSは非常に魅力的なパーツになることは間違いない。

◆GRヤリス試乗インプレッション

トヨタ GRヤリス HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ GRヤリス HKS「ハイパーマックスS」装着

次に試乗したのはGRヤリス。GRヤリスも前後とも15段目のセッティングだ。GRヤリスは軽快なハンドリングでヒラリヒラリとコーナーをクリアしていくのが気持ちいいクルマだが、ハイパーマックスSを装着したモデルはその軽快感をさらに高めたような走りになる。そんなはずはないのだが、感覚的にはクルマが軽くなったように感じる。エンジンチューニングで得られるトルクアップの感覚とは違い、ステアリングを切った瞬間にスッとインに向く動きや、ロールが収まっていく過程がじつにスムーズで気持ちいい。

トヨタ GRヤリス HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ GRヤリス HKS「ハイパーマックスS」装着

コーナーへ向かってブレーキングした際はノーズダイブが少し大きめだった。サスがしっかり動くだけのストロークを確保し、乗り心地を稼いでいるからこその動きなのだが、それでいてコーナーでのロール方向の動きには不満がない。なんとも不思議な感覚だ。昔のチューニングの価値観なら、もっとサスペンションの動きを抑えてガッチリした足にしただろう。しかしHKSはサスペンションを動かし、しっかりグリップさせていく方向性を明確に打ち出している。今回は試乗時間が短く、いろいろ試せなかったが、車高や減衰力を調整しながら自分好みのセットを探していけば、さらに楽しめるだろうという印象を受けた。

トヨタ GRヤリス HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ GRヤリス HKS「ハイパーマックスS」装着

GRヤリスの乗り心地も良好だ。装着タイヤは265/35R18。ノーマルタイヤは225/40R18なので、扁平率はほぼ同一ながら4ステップも太くなっている。当然タイヤのバネ成分は減少しているはずだが、路面の継ぎ目などはしっかり吸収できている。

◆ターボ仕様GR86で分かった走り心地の真価

トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着

最後に試乗したのはGR86。このGR86はなかなかのクセモノだ。ターボ装着によって最高出力は大幅にアップ。アクセルを少し踏み込むだけでグイッと前に押し出される感覚は、まさにチューニングカーそのものだ。割り当て試乗時間の最終枠で乗ったとはいえ、2月の箱根ターンパイク、それも午前中の試乗である。エンジンにとっては好条件の低い気温だが、タイヤにとってはなかなか厳しい状況だ。ちなみに装着タイヤサイズは255/35R18であった。

トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着

ヴェルファイアとGRヤリスは30段調整の中央値である15段にセットされていたが、GR86はパワーアップされたモデルということもありセット値は10段。HKSのサスは数字が少ないほど減衰力が高くなる。そのためかなり硬めの乗り心地かと思って走り出したが、意外なほどサスは動き、乗り心地は悪くない。もちろんヴェルファイアのようなゆったりしたフィールではないが、ターボ仕様のGR86の足まわりとしては驚くほどいい。路面の継ぎ目などは上手にいなしつつ、路面状況の変化はしっかりステアリングへ伝わってくるので安心感も高い。

トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着

コーナーへ向かってのブレーキングでもノーズダイブは少なく、GRヤリスよりGR86のほうが私の好みには合う。勘違いしないでほしいのは、GRヤリス用はノーズダイブが大きい製品、GR86用は小さい製品ということではない点だ。それぞれ車高や減衰力の調整が異なっていただけで、このあたりは車高調整と減衰力調整という2つの機構を持つハイパーマックスSなら、好みに合わせたセッティングが可能ということだ。

トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着

コーナー進入時にステアリングをゆっくり切っていくと、ノーズがスイッとインを向く。この動きに上下動が介入してくることはほぼなく、フラットさを保ったままコーナリングへ入っていく。スムーズな旋回を意識してゆっくりアクセルを踏み込むと、安定した姿勢を保ったままオンザレール感覚でコーナーをクリアしていく。じつに快適にワインディングを楽しめる。一方でアクセルを強めに踏んでいくと、トラクションの警告灯が激しく点滅して作動を知らせる。過度にトラクションコントロールが効いて前に進まなくなることもなく、かといってリヤタイヤが唐突に滑り出すこともない。トラクションコントロールとの相性もよく、自然にドライブできるのがいい。つまりスポーティに走っても、やたらと気を使う必要がないのだ。

トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着トヨタ GR86 HKS「ハイパーマックスS」装着

コーナーを楽しむことを少し休んでワインディングを流してみても、嫌みな上下動や微振動はなく、ゆったり感のあるドライブができる。先ほどまでのワクワクドキドキする走りと、この快適な移動との両立ができているところこそ、HKSの言う『走り心地』のよさなのだろう。ハイパーマックスSは今回のマイナーチェンジで減衰力の調整幅がさらにワイドになり、より多くの人が自分好みのセッティングを見つけやすいサスペンションキットになった。エンジンまわりだけでなく、足まわりチューニングの奥深さも備えるHKS。トータルチューナーとしての魅力はますます高まっていく。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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