ロボタクシーの競争軸は技術から運用へ:3つの競争軸と戦略的選択肢…ボストン コンサルティング グループ 滝澤琢氏[インタビュー]

ロボタクシーの競争軸は技術から運用へ:3つの競争軸と戦略的選択肢…ボストン コンサルティング グループ 滝澤琢氏[インタビュー]
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かつて過度な期待とともに語られ、その後の事故や技術的論争や障害によって後退、もしくは失望の念が広がった「自動運転」。しかし、米中の商用ロボタクシー事業が始まるなど、この2、3年で事業としての道筋が見えてきた。

米中が巨額の投資で先行するなか、日本企業はどう立ち向かうべきか。レスポンスセミナー「【ロボタクシー競争】日本企業はいかに戦うか~OEM・サプライヤー・モビリティ事業者別に読み解く戦略と勝ち筋~」では、ボストン コンサルティング グループ(BCG) マネージング・ディレクター&パートナー BCG産業財・自動車グループ 日本リーダーの滝澤琢氏を迎え、この問題について市場や技術の現状・課題を明らかにし、取りうる戦略のヒントを探る。

ロボタクシーの現在地:失望の谷を越え、着実な進化へ

「自動運転という言葉が話題になり始めた2010年代半ば、新しい技術、市場が広がると過度な期待が先行しました。しかし2020年代に入ると、いくつかの人身事故やスタートアップの淘汰を経て、『やはり夢物語だったのか』という失望の声も聞こえるようになりました」(滝澤氏:以下同)

しかし、この2年で状況は一変している。米国のウェイモ(Waymo)はサンフランシスコをはじめとする複数の都市で商用展開を広げ、中国でも百度(Baidu)などが無人運行サービスを現実のものとしている。

「先ほど、『失望』という言葉を使いましたが、実際には消費者・業界各社ともに、自動運転というものをより冷静に見るようになったのかもしれません。したがって、大手、スタートアップ問わず技術力、投資体力がある企業は着実に研究開発を続けていました。無人のロボタクシーは、もはや未来のSFの世界の話ではなく、現実のビジネスになりつつあります。期待から失望を経て着実に進化し、社会実装に向けて前進している。これがロボタクシーの現在地です」

競争軸の転換:技術開発から「事業としての経済性」へ

かつての競争軸は、いかに他社より優れたセンサー技術を開発し、高度な運転支援、自動運転のアルゴリズムを開発するか。そのためにいかにAIを活用するかという「技術開発」の一点に集約されていた。

もちろんイノベーションの多くは技術革新によってもたらされるので、これは物事の進化、発展の過程では一般的なことだ。一方、滝澤氏は「技術開発が重要であることに変わりはありませんが、今は『サービスとしてどう実装するか』が勝敗を分ける要因になっています」と指摘する。

具体的には、以下の3つの要素が新たな競争軸となっているとする。

・事業の経済性(収支)
・運用・オペレーション
・規制・行政対応

3つの競争軸の鍵となる投資戦略と官民連携

事業の経済性を考える際に忘れてはならないのは、自動運転技術やAIには多額の投資がなされている事実だ。ロボタクシーサービス単体での収益確保は前提として、投資の回収という側面にも注目する必要がある。

運用に関しては、主にタクシー業界を含むモビリティサービス事業者、交通事業者が強みを有する領域だ。数百台規模の車両をどのように配置、スケジュールするか。メンテナンスも含めて管理する必要がある。また、繁忙期の時間、場所などの詳細は実務から収集される情報や知見の蓄積が競争力を左右する。

規制や行政対応と、関連する社会受容については、自動車業界だけでどうにかなるものではないが、中国や米国は国策としての支援もあり先行している事実もある。幸い、日本政府も無人のロボタクシーを公道で走らせるための法整備を進めている。

だが、世界をリードする米国と中国。特に中国の強さは、国家レベルでのバックアップにある。

「中国では、個別企業への具体的な支援内容には不透明な部分もありますが、国家戦略の一環として自動運転産業の振興支援をしています。また、一部の実証エリアでは、ロボタクシーをはじめとする自動運転車の走行を前提に、道路標識や通信インフラ(V2X)などの整備や最適化が進められており、官民一体となって社会実装を後押ししています。一方、米国はGoogle傘下のウェイモに代表されるように、巨額の資本を背景とした継続的な技術投資が進められており、それが優秀な人材の獲得やデータ蓄積の面で優位性につながっています。年間数千億円規模の投資が必要とされるケースもあり、こうした資本力を持つ企業が競争上有利な構造となっています」

新しい競争軸では、官民連携と、実装・運用を前提とした取り組みと戦略が問われている。このステージの変化に対応できたプレイヤーだけが、幻滅期を超えて現在市場に残っているともいえる。

日本企業の現在地と3つの戦略的選択肢

こうしたグローバルな潮流に対し、日本企業は残念ながら「出遅れている」と言わざるを得ない。OEM(自動車メーカー)単体での巨額投資には限界があり、レベル4の実装に向けたスピード感でも米中に水をあけられている。

滝澤氏は、今後日本のOEMが取りうる戦略を3つのパターンに分類する。


《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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