【スズキ eスカイ】“未来のEV”ではなく“日常の軽”を描く、「素直なデザイン」にこだわった理由

スズキ e SKY(eスカイ)のデザインスケッチ
スズキ e SKY(eスカイ)のデザインスケッチ全 20 枚

2026年秋、スズキは軽乗用EVの『e SKY(eスカイ)』を国内市場に導入する。EVである以前に「軽を必要とする人のためのベーシックなクルマ」をめざし開発されたというeスカイだが、そのデザインは何をめざし、何を表現したのか。デザイナーに話を聞いた。

eスカイは、2025年の「ジャパンモビリティショー」で公開された『Vision e-Sky』の市販版にあたる軽乗用EVで、スズキの軽乗用EV第一弾として発売される(軽商用EVとしては『eエヴリイ』がある)。“Easy to Switch!”をコンセプトに、いつもの軽から無理なくEVに乗り換えられるよう、しっかりと日常使いができるクルマを目指した。

一充電あたりの走行距離は310km。交流電力量消費率を97Wh/km(1kmあたり97Whの消費)とし、「少ない電気でたくさん走る」ために、コンパクトで軽量なeアクスル、軽トップをねらった空力性能、軽量で薄型にこだわった安全で長寿命なLFPバッテリーなど、スズキらしい設計思想が盛り込まれた。

◆スマート、アイコニック、コージー

スズキ e SKY(eスカイ)のデザイナー、左から前田貴司さん、伊藤仁美さん、遠藤拓磨さん

エクステリアデザインを担当したスズキ商品企画本部四輪デザイン部エクステリア課課長の前田貴司さんは、スズキ初の軽乗用EVならではの“攻め方”に悩んだ。開発当初、日産から『サクラ』が登場し、そこから3年後に出る軽EVはどういう立ち位置が相応しいのか。それがデザインを考える上でのキーポイントになったという。

「(3年後のEVは)新しい乗り物という感じではなく、もう少し一般的になっているはず。スズキだからこそできる、ユーザーの生活に近い乗り物にしたいと内外CMFデザイナーとともに合宿をして情報収集しながら進めました」(前田さん)

インテリアデザインを担当した同インテリア課係長の遠藤拓磨さんは、「(当時の)EVはちょっと冷たくて先進感があってというイメージでした。我々は飛び道具を用いるような会社ではありません。スズキらしい温かみのあるデザインやキャラクター性、そしてスズキのそれぞれのクルマ達が持つアイコニックさを深掘りした結果、スマート、アイコニック、コージーという3つのワードを掲げてデザインしました」と明かす。

前田さんのこだわりは、ヘッドライトからリアまでつながるラインだという

スマート、アイコニック、コージー。これらを踏まえ、エクステリアは「素直なデザイン」をめざした。そのうえで、軽自動車という限られたサイズの中で、「豊かな表情や、きちんとタイヤに荷重が乗っている、クルマとしてのバランスの良さを追求することで、長く使ってもらえ、自然に生活に溶け込むデザインを最初からイメージした」と話す。

また前田さんは、「『ワゴンR』や『ハスラー』は道具感やゴツゴツしたアウトドア感という味付けのデザインですが、eスカイはより気持ち良く走りを楽めるクルマを連想できるようなデザインです」と違いを語る。例えば、きれいにリアに向けて流れていくルーフラインやヘッドライトからリアコンビランプに繋がるサイドのキャラクターラインなどがそれにあたり、「移動自体がスムーズでストレスフリー、電気のスムーズさも相まって心地良い走りの印象を持たせています」とのこと。

◆スズキ初の四輪車からインスピレーション

スズキ e SKY(eスカイ)
スズキ初の四輪車「スズライト」(1955年)

サイドラインにはもうひとつ意味がある。そのモチーフとなったのが、スズキ初の市販四輪車は1955年に登場した軽自動車の『スズライト』だった。スズライトの少し弧を描くようなショルダーラインからインスピレーションを得て、eスカイのサイドのキャラクターラインが生まれた。つまりスズキ初の軽乗用EVだからこそ、スズキ初の四輪車にインスピレーションを求めたのだ。

前田さんは、初期に描かれたスケッチの段階から既にこのサイドラインの案があったと明かす。海外のデザインスタジオからの提案で、「彼らなりにスズキのルーツを探りながらこのインスピレーションに繋がっていった」と話した。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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