<講師>
KPMGコンサルティング株式会社 プリンシパル 轟木 光 氏
1990年代の中国では、現在のようなNEV市場はまだ形成されていませんでした。その後、約30年を経た2026年8月には、NEVが中国の自動車販売に占める比率は60%を超えるまでに拡大しています。この変化を理解するには、電池性能の向上や補助金によるBEVの普及だけでなく、市場を支えた政策や産業基盤の変化にも目を向ける必要があります。
中国では、技術開発から始まり、バス、タクシー、公用車による初期需要の創出、購入支援、税制、ナンバープレート政策、充電インフラの整備、電池産業の育成、NEVクレジットなどの競争ルールへと、政策の重点が段階的に移ってきました。この30年間で整備されたのは、BEVという製品だけではありません。消費者が選択し、企業が投資し、サプライチェーンが拡大し、企業間の競争が進む市場環境も、あわせて形成されてきたと考えられます。
一方、世界では、従来の乗用車よりも小さく、速度、航続距離、乗員数、利用エリアなどを限定した、「クルマ未満、二輪以上」ともいえる電動モビリティが各地で普及し始めています。ただし、その用途や市場の成り立ちは地域によって異なります。インドでは、電動三輪車が業務や収入を得るための移動手段として利用されています。欧州では、L6eなどが若者の身近な移動手段となっています。米国では、LSVがコミュニティ内や通行可能な道路で利用され、中国では、低価格な個人向けモビリティとして小型BEVが普及しています。
軽自動車という既存カテゴリが定着している日本では、小型BEVにどのような可能性があるのでしょうか。単に小型で価格を抑えたBEVとしてではなく、これまで自動車を保有してこなかった個人や、自動車の機能を十分に活用できていなかった個人・企業にも利用を広げられるかが重要な論点となります。こうした新たな顧客や用途を生み出せれば、小型BEVは軽自動車を補完する新しいモビリティ市場へ発展する可能性があります。
本セミナーでは、中国NEVの約30年を、政策の変遷だけでなく、どのような段階を経て形成されたのかという観点から整理します。その上で、中国、インド、欧州、米国、日本の小型電動モビリティについて、車両サイズだけでなく、「誰が、何のために、どこで、どの程度の費用で利用するのか」という視点から比較します。車両価格や電池性能に加え、免許制度、道路環境、型式認証、安全規制、TCO、初期顧客なども踏まえ、2030~2035年に小型BEVが新たな市場を形成するための条件を考察します。
1. 中国はBEVを作ったのか、市場を作ったのか
2. 市場は何から作れば良いのか
3. 「クルマ未満、二輪以上」は一つの市場なのか
4. 小型BEVは2030~2035年の新しいモビリティ産業になりえるか
5. 質疑応答



