トヨタ自動車は軽自動車を取扱うダイハツ工業を子会社に持つものの、軽自動車に対する優遇制度には一貫して反対の立場を貫いている。その急先鋒が日本自動車工業会会長でもある奥田碩トヨタ自動車会長だ。その理由は簡単で、『ヴィッツ』などのスモールカーの市場が軽自動車に食い荒らされているからだ。
もともと軽自動車の優遇税制は、自動車がそれほど普及していないころ、一般の大衆が買いやすい自動車を普及させることを目的に始まった。自動車取得税、自動車重量税、自動車税(軽自動車は軽自動車税)でそれぞれ税金が優遇されており、登録車の保有コストは軽自動車と比べて年間で数万円も高い。
トヨタの主張では、自動車が大衆化した現在でも、こうした軽自動車の優遇税制が温存されている。軽自動車とヴィッツなどのスモールカーで車格はほとんど変わらないのに、税金に格差があるためスモールカー市場の成長を阻害、つまり軽自動車を持たないトヨタのシェアアップの障害になると見ており、軽自動車の優遇税制の撤廃を求めている。
もちろんダイハツは、トヨタの軽の優遇税制廃止の方針に異論はあるものの、そこは資本の論理で親会社に意見することはできない。このため業界団体の軽自動車協会の会合では、ダイハツは沈黙する場面も少なくないとか。トヨタとしては、軽自動車優遇税制が無くなった後のダイハツがどうなるかは、ダイハツの努力次第。それよりも軽の優遇制度を無くせば、軽自動車を取扱っていないトヨタの市場での不利が無くなることが重要と見ているようだ。
ただ、自動車に関する税金が諸外国と比較して明らかに高い中、軽自動車を暮らしの足として重宝しているユーザーも少なくないはず。トヨタの論理は年間1兆円もの利益を上げている会社だからこそいえる、強者の論理だとの指摘も。