6月30日付でスズキ社長に就任した鈴木俊宏氏は同日、自身が中心になって策定した中期経営計画(2015~2019年度)を発表した。「SUZUKI NEXT 100」と名付けられたそれは、2020年に創立100周年を迎えるスズキが次の100年も成長し続けるためのものだ。
その中で、鈴木新社長は取り組む課題として次の7つを上げた。
・お客様の安全、安心のための品質管理体制の構築
・二輪車事業の赤字体質からの脱却
・日本、インドに次ぐ柱の育成
・販売力、サービス力の強化
・新技術への対応(環境、安全、通信、電動化等)
・スズキブランドの向上
・グローバル経営を支えるグループ人材育成
なかでも頭の痛い課題が二輪車事業だ。鈴木新社長も常々「二輪車事業をなんとかしなければいけない」と語っていた。この5年間の営業利益を見ても、2010年度108億円の赤字、11年度24億円の赤字、12年度119億円の赤字、13年度1億円の黒字、14年度7億円の赤字と全くといっていいほどいいところがない。他の二輪車メーカー3社が確実に収益を上げるなか、完全に出遅れた格好だ。
そこで「選択と集中によって事業を再構築し、スズキらしい、特徴を明確にした商品で赤字体質からの脱却を図る」と鈴木新社長は強調。『カタナ』や『ハヤブサ』のような特徴のある二輪車で存在感を示していくという。この戦略は川崎重工業が取ってきたものと同じだ。『Ninja』シリーズを中心とした中型以上のバイクに集中して存在感を示し、収益の上がるビジネスに変えた。そして現在、同社の事業のなかで売上高トップ、営業利益が航空宇宙事業に次ぐ2位の事業にまでになった。
「走る、曲がる、止まるという基本性能をしっかりつくり込むという原点にもう一度立ち返り、二輪車を充実していきたいと考えている。特に注力するカテゴリーは150cc以上、バックボーン、スポーツ。中・高価格帯へのシフトにより収益改善につなげていきたい」と鈴木新社長。
さらに、先進国ではイベントなどの告知活動や部品・用品の販売強化、また新興国ではASEAN生産拠点の集約や大型車販売網の整備によって収益性の向上を図っていく方針だ。果たして万年赤字体質の二輪車事業が鈴木新社長の目論見通りにいくのか、これから数年間スズキの二輪車事業に目が離せない。