自動運転時代の近未来、移動シーンはどう変わるか…MaaS 市民参加ディスカッション

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SIP 自動走行システム 第2回 市民ダイアログ『未来社会とMaaS』(東京大学 生産技術研究所、2月5日)
SIP 自動走行システム 第2回 市民ダイアログ『未来社会とMaaS』(東京大学 生産技術研究所、2月5日) 全 8 枚 拡大写真

A地点からB地点まで、あらゆる行程をアプリ一発で最適なルートで導いてくれる時代へ向け、どんな未来が描けるか--。

東京都内の東京大学生産技術研究所で2月5日、「未来社会とMaaS ~これからの移動を実現するサービス~」と題したディスカッションが行われ、SIPメンバーや市民パネリストらが語り合った。主催は内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:Strategic Innovation Promotion Program)。

登壇者は、SIP 自動走行システム 葛巻清吾プログラムディレクター、同 有本建男サブ・プログラムディレクター、国際自動車ジャーナリスト・同推進委員会 清水和夫構成員、モータージャーナリスト・同推進委員会 岩貞るみこ構成員、東京大学 生産技術研究所 大口敬教授、同 空間情報科学研究センター 柴崎亮介教授。

これに、学生、社会人大学生、コンサルティング会社員、医療ジャーナリスト、総合電機メーカー、建設コンサルティング会社員、農業ビジネス企業・学生、交通事業者スタッフの市民パネリストが加わる。

MaaS が描く交通の未来

MaaS(Mobility as a Service)は「消費者の移動の目的に合わせた移動手段の提案を行うデジタルプラットフォームとして、ユーザー体験と交通の両面から最適化する」こと。線の移動から、道路へ、街区へ、都市空間へとフィールドを広げて取り組む動きのひとつ。

直近の取り組みでは、「バスや電車といった従来の公共交通をはじめ、カーシェアやバイクシェアなども組み合わせた移動手段の提案」や「チケット予約から決済まで、移動計画をすべてアプリで完結させる」、「交通全体の効率化を図り、都市部の渋滞などを解決させる」といった動きも MaaS に含まれる。

たとえば近い未来、道路に埋め込まれたLEDで、その道路を行く種別(歩行者、自転車、クルマ、バス、貨物車など)を最適な幅で変える「ダイナミック道路」も、出現する可能性もある。

さらに、クルマの自動運転も、ただA地点からB地点へ最短距離で行くだけでなく、道路の混雑状況や飛び出しリスク、料金といった条件に最適なルートを選定し、目的地まで連れて行ってくれるシーンも描いている。

自動運転は、移動の目的・価値を変える

この MaaS のなかで、自動運転は生活空間にどう影響するか。冒頭の大口教授・柴崎教授の解説では、たとえば「人・モノの配置と動線の最適化」で、カフェで打ち合わせ中、その話題の資料が届くといったシーンや、病院に行かなくても医師が自宅に来てくれるといったシーンが紹介された。

また、自動運転によって、「道路・信号などのコントロールが、人の流れによって変わる」「物流・移動サービス企業とユーザーの関係が変わる」「都市と地方の関係が変わる」「その場所に人が集まる理由が変わる」「街のコンテンツ・地域産業が重視される」「労働スタイルが変わる」といった可能性を伝え、「移動の目的や移動の価値そのものが変わるかも」と教えてくれた。

未来の移動目的から、必要なサービスをバックキャスティングする

こうした現状から、2030年の日本の暮らしと移動、MaaSのニーズを探り、新しいサービスを実現させるには、なにがいま求められていて、どんな未来が描けるか。SIPメンバーと市民がアイデアを出し合い、近未来について語り合った。

このディスカッションでは、こんな言葉が飛び交った。

「交通には2つある。移動自体のこと、目的地へ行くための手段。モビリティとスケジューリングに関していえば、人間は、過去に起こったことは『もういいです』となる。人間は、未来へ向かって行動しているので、『示唆してほしい』という欲求がある。それを『予測』といってしまうと身構えてしまう」

「日本の企業は『コンプライアンス』という言葉の裏で、企業が持つそれぞれの資産をどこかで『抱え込んでいる』という風潮がある」

「Suicaの顧客データ事件と同じく、データ共有というトレンドの裏には、大きなビジネスリスクがはらんでいる。だから、データを出してもかまわない、出しても叩かれずに済むという風潮と文化がないと、連携のためのデータ共有は結局『Googleに任せるしかない』になってしまう」

「公共という概念は変わっていくと想う。税金についても、ふるさと納税で自分のほしいものを得るとかを見ていると、まさに『税金ってなに?』みたいな話題も出てくる。公共は官が決めるわけじゃない。いつまでも官が導いていたら、創造性がなくなる。テクノロジーで変えていくという点で、市民が公共を決めていかなければならない」

「ただ、官の判断によって変わるものもある。鉄道の国鉄分割民営化などもその例」

走る○○、自動運転で移動自体が“旅化”する

このディスカッションのなかで、市民参加側の女性の「免許を持っていない女性としては、MaaSがすすむと、移動自体が“旅化”するとも考えられる」という話が印象的だった。

この「旅化」というキーワードから、「走る○○という考え方が広がる。走る映画館、走るカラオケボックスとか。走る○○を考えたとき、運転手がいないほうがいいと思うときがある。そういう意味では、自動運転はかなり魅力的な存在」と続いた。

また、「海外の検索ワードでは、チケットレスやAIドライブといったワードがよく出てくる。ところが日本は、まだまだ自動車そのものの名前とかが多い。そもそも日本では、自動運転の世界などを調べている人がまだ少なくない。自動運転のニーズを汲み出すためには、ちゃんとコンテンツとしてとらえなければならない」といった意見もあった。

国際自動車ジャーナリストで同推進委員会構成員の 清水和夫氏は、「市民のためのクルマやルールを考えたい。戦後復興産業論のためのクルマから、市民のためのクルマ社会をつくっていくためにも、市民による MaaS をこれからも語り合っていきたい」と伝え、ディスカッションを締めくくった。

《レスポンス編集部》

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