1月11日は成人の日です。若者の車離れが言われて久しいですが、車経験のある人生の先輩として、新成人に「車の楽しさ」を教えてください。と、アドバイスを募集したのですが「車の良さ、って言ったってねぇ」。
●車は道具
けっこう車の存在意義としての核心をついている意見がありました。まずは、一読すると否定的な意見から。
「車は『道具』です。今の年寄りが若い頃は、車に個性とも言える癖が有り、それを使いこなすこと自体にカッコ良さも有りましたが、今はそうではありません。あなたが道具の使い道に思いが及ばない生活を送っているなら、高い買い物に悩む必要など無いのです」
「車うんぬんよりも、その先にどう楽しみを見つけるか、の話。何かを見に行きたいから何百kmを運転することが“車の楽しさ”だと言うのは本末転倒」
そうなんです。「夕日を見られる」、「夜景を見られる」のを「車の楽しさ」というのは手段と目的が入れ違っています。若い人にとって「夕日を見られる」なら車に乗らなくたっていいのです。移動せずに「夜景を見られる」ならそれでいいのです。目的達成のための準備や手段は簡単な方がいいわけで、なんならまったくなくてもいいわけで、それを「楽しい」というのは、若い人にとって本末転倒なのです。
新成人よ、車は楽しいぞ
●「いつでも」「どこへでも」の文脈
「いつでも出かけられる」「どこへでも行ける」というのも、時刻表でレールの上を走っている電車に対する優位性でしかありません。「電車は10時00分発しかないけど車なら9時59分に出られる」という理由で、若い人は「楽しそうだ、車で行こう」となるでしょうか。それに新成人なら就職したり、学校に通っている人です。「いつでも」というのはそもそも無理があります。
「どこへでも行ける」というのも、整備された道路の範囲です。この理由なら徒歩の方が楽しいことになります。日本国内ですら、北海道と本州の間は車での移動ができないのですから、その範囲の「どこでも」が若い人にとって楽しさになるでしょうか。
いつでも、どこへでも、は「初めて自転車に乗った時のことを覚えていますか？ 一気に活動範囲が広がりましたね」、「行動範囲が広がることは悪くないですよ。まずは免許を取ってみて」、「電車で行けない知らない土地へ行けるぞ！ 知らなかったことを知ることが知識！」「真夜中に1人で、好きな音楽をかけながら、初めての道をナビを使わず探索ドライブ。これは車に乗り始めてからやめられない止まらない」というふうに解釈すべきでしょう。楽しそう。
新成人よ、車は楽しいぞ
●自由な空間
車は自由に移動できる空間。「電車だと飲食するのに気を使う」「好きな音楽を聴きながら、景色が良いところをドライブするのも楽しいですよ」、「橋や海沿いを走ったときの爽快感、車中泊なら激安で旅行可能、好きな音楽を爆音でかけられる」。音楽との相性はいいようですね。
走る、わたしの秘密基地。「考え事したい時、家族とケンカした時。カラオケもできて、映画館にもなって、カフェにもなる。移動すれば、その時の気分に合った空間になる。部屋の模様替えしなくても、気分転換になる。大人になればなるほど、そういう空間が大事で必要で、成長させてくれる。愚痴も悩みも弱音も、希望も野望も夢も、ぜんぶ知ってる。音痴なことも（笑）」。ありがとう、明日もよろしく。
「ネットが発達して誰かと何かしら繋がっていて、コミュニケーションにうんざりするとき、自分のクルマで行き先も決めず、ひたすらドライブする。スマホは通知を切り、好きな音楽を聴きながらドライブする。最高の気分転換、リフレッシュができます。こういう時代だからこそ、もう一度クルマの魅力が伝わればいいなぁ」
運転中に周囲に注意を払うことによって、コミュニケーション能力が高まった、という人もいました。「道路交通法、ローンでの資金調達、納税、保険加入の大切さ、運転技術、交通（世間）の流れに合わせる力。その後使える社会勉強になります」。勉強にはなりますが、若い人はこういうのをちょっと重いと敬遠するのでは？
新成人よ、車は楽しいぞ
●騙されたと思って乗ってみて
「おっさんたちに『車は楽しいぞ』なんて言われようが関係ない」、「何となく欲しいと思ったら買えばいい」。それはそうかもしれませんが、「楽しいと思わない」と「楽しさを知らない」とは明確に違うわけで。騙されたと思って乗ってみて。
「体力のあるうちなら東京～大阪も車で行ける。いろんな場所の名産品にSAで出会えるから楽しいぞ」。ネット通販がありますよ。「体力ある若いうちにしか出来ないので、車で1000kmの旅とかしておくと思い出として良いですよ」。しんどいなあ。「ハンドル切った方に曲がる、スピード出し過ぎると曲がらない、でも練習すれば曲がれるようになる。ほら、楽しいぞ！」。練習しなきゃダメなの？ 「晴れたワインディングをアクセル、ブレーキ、クラッチを操作し、よどみなくスムーズに駆け抜けた時の爽快感」。ゲームでいいじゃん。
「欲しいクルマがあるなら、勢いまかせで手に入れてしまうべき。なぜなら、特に都会住まいであれば、理性的に考えれば考えるほど『クルマを持つデメリット』のほうが多いことに気づいてしまうから。でも、そうして出逢ったクルマが、あなたの人生を変えるかもしれない。20歳で買ったホンダ『ビート』に人生を狂わされた私こそ、その証拠」。人生が狂っちゃうほどのリスクは冒したくないなあ。
楽しい。楽しい人には楽しいと思いますが……。車の楽しさって、若い人のメンタリティと相入れませんね。と、言うか、オールドファンのメンタリティが若い人と相入れませんね。「騙されたと思って乗ってみて、とは言えない」。
新成人よ、車は楽しいぞ
●ぜひヒトケタ万円で車を買ってください
でも、いましたよ。車が好きで、若い人にも車を楽しんで欲しくて、車を好きになってもらいたいと願っている人たちが。
「車は高い、維持するのが面倒！ そうですね～。確かにお金はどんどん出ていきます。でも、どこにでも行けるし、自分の車を少しずついじり始めると楽しくなるし、話題も増えます。SNSのネタにもなりますよ。皆さんが音楽で懐かしむように車でも同じことができます。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか？ 車のことは知らなくてもいいんです。専門の人に任せてもいいんです。そのためにショップがあるんです。そこで楽しさのサービスをもらってください！ 言葉や文字ではなかなか伝わりませんが、いつかあなたもこんな方法で伝えたくなるかもしれませんよ～」
「ぜひヒトケタ万円で車を買って、乗ってください。すぐにガタが来るかもしれませんが、治してあげてください。本格的に壊れる前に、必ず微かな兆候があります。そして色々な場所へ出かけてください、その車とお別れしないといけない時までに、思い出がいっぱいできます。やんちゃな運転をしたくなるだろうけど、くれぐれも安全運転で。落ち着いたハンドルとペダルさばきが、グッと大人らしく見えますよ。そんな若い頃の経験が今の生活にとても役に立っている46歳のオジサンより」
「車はモノっていうより相棒だと思います。嬉しいときも悲しい時も、常にそばに寄り添ってくれる。メンテを怠れば機嫌を損ねたりすることもあるけど、自分やパートナーを色々なところに連れて行ってくれ、素敵な経験をさせてくれる相棒。手元に欲しくありませんか」
