注目が集まる「クワドリサイクル」
クワドリサイクル、つまり原動機付き4輪車の規格は以前から欧州にあったのだが、ここへ来てこのカテゴリが注目を集めるようになっている。なぜかと言うと、EV化によってこのカテゴリの実用性が大いに高まるとともに、EV化によって新規参入する企業が急増しているからだ。
今回は、そのような新規参入組のなかでも注目のイスラエルのベンチャー「シティトランスフォーマー(City Transformer)」社のイタマール・メリドール氏(Marketing Business Development)に、IFA2022(国際コンシューマ・エレクトロニクス展)でインタビューしたときの模様をお伝えするのだが、話に入る前にまず、このクワドリサイクルの規格について整理しておこう。
L6eとL7eの違い
クワドリサイクルとはEUにおける四輪車の規格で、Light Quadricycle = L6eと、Heavy Quadricycle = L7e に分けられている。L6eは車重425kg以下(バッテリーの質量を含まず)、最高速度は45km/h以下で、出力6kW以下。L7eは重量450kg以下(物品運搬用の車両は600kg以下)、積載量が200kg(乗用)または1000 kg(運搬用)以下で、出力15kW以下と規定されている。
L6eカテゴリでは、2020年にシトロエンが『アミ』という車両を発表しているが、今回紹介するシティトランスフォーマーは、アミの一つ上のカテゴリL7eに該当する車両のメーカーだ。
シティトランスフォーマーは、低速走行時は全幅1mの非常にスリムな車体、速度が上がると自動的にトレッドが広がり、全幅1.4mとなって走行安定性を向上させるというギミックを搭載した車両の生産を進めている。
トヨタ『i-Road』を参考にした車幅
---:なぜトレッドが広がるという仕組みを搭載したのか。
イタマール・メリドール氏(以下敬称略):静止状態では幅が1mだが、速度が上がるにつれて1.4mに自動的にトレッドが広がる仕組みだ。車幅1mはトヨタ『i-Road』を参考にした。i-roadは車体が傾いてカーブすることで走行安定性を確保する仕組みだが、このモデルでは、トレッドを広げることで安定性を確保した。車幅が1mの状態を「シティモード」といい、1.4mに広がった状態を「パフォーマンスモード」としている。40~45km/hで自動的にトレッドが広がる。
車高は1580mm、全長は2500mm。ドイツのパーキングロットは幅が2.5mなので、その枠に縦に駐車することができ、ひとつの枠に4台収めることができる。モーターはリアホイール内に、ハブモーターを左右それぞれ装備している。出力の独立制御は現時点ではしていない。

---:車両のサイズは軽自動車規格を意識したものか。