急な降雪でも走れる、ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」の可能性

急な降雪でも走れる、ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」の可能性
急な降雪でも走れる、ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」の可能性全 3 枚

寒さが深まると、スタッドレスタイヤ購入やタイヤ交換需要が高まる。だが、地域によってはスタッドレスタイヤ装着の必要性をあまり感じていないユーザーもいることだろう。

実は日本では、積雪や凍結している道路をノーマルタイヤで走行すると“すべり止めの措置をとらない運転”として法令違反となる。都道府県道路交通法施行細則または道路交通規則として沖縄県を除く各地では「防滑措置の義務」があり、違反すると反則金(大型車7千円、普通車6千円、自動二輪車6千円、原付車5千円)の納付が必要となる。また2018年12月から大雪災害対策として、一定条件下の規制区間でタイヤチェーン装着の義務化もスタートした。

このような背景がある中で、1年を通して使用できる「オールシーズンタイヤ(全天候型タイヤ)」が数年前に登場し、複数のタイヤメーカーが市場導入して販売促進を行う動きがある。スタッドレスタイヤ装着が定着する日本で、オールシーズンタイヤが普及する可能性はあるのだろうか? 

オールシーズンタイヤ「クロスクライメート」シリーズを展開する日本ミシュランタイヤ株式会社の乗用車・商用車タイヤ事業部マーケティング部ブランド戦略マネージャーの黒谷繁希氏に、同社の考えについて話を聞いた。

雪でも走れる夏タイヤ、非降雪地域がターゲット

同シリーズは “雪でも走れる夏タイヤ”と銘打ち、夏タイヤの性能はそのままに雪の走行性能を加えた新発想のタイヤとして、2015年にヨーロッパ市場向けにリリースされたのが始まり。欧州では、日本のスタッドレスタイヤとは異なるウィンタータイヤが普及していたが、雪が降っても路面凍結しない地域が多かったため、オールシーズンタイヤにメリットを感じるユーザーが多く好評を得て普及が進んでいったという。

日本での輸入販売を開始したのは2019年2月上旬。なぜこの時期だったのか。日本はスタッドレスタイヤが浸透しているものの、30年単位でみると降雪量が減少し暖冬傾向がみられるようになってきた。非降雪地域ユーザーの場合、コストをかけてスタッドレスタイヤを購入しても、凍結路面や雪道を走る機会が少ないまま、春を迎えノーマルタイヤへ交換することになり、スタッドレスタイヤの保管場所に苦労する。マンションのベランダだったり、有料タイヤ保管サービスを利用せざるを得ないケースもあるだろう。また重たいスタッドレスタイヤを運ぶのが手間で、特に高齢の場合は体力的な負担も大きい。

オールシーズンタイヤは、そういった状況にある非降雪地域ユーザーの利便性向上に貢献できる商材としてニーズがあるのではないか? との考えから、事前にテスト販売を行いユーザーや販売店の反応を探ったところ、満足度は高かった。これが大きな後押しとなり全国販売に至ったという。

積極的にオールシーズンタイヤを訴求

2019年2月上旬に「クロスクライメート」シリーズを販売後、より性能を向上させた「クロスクライメート2」を2021年10月上旬にリリース。同製品は、突然の豪雨や降雪が増えている国内環境に着目して開発されており、ハンドリング性能やドライ・ウェット時のブレーキング性能を高い水準で満たしながら、急な降雪での雪上走行も可能にした点が大きな特徴となっている。新開発のコンパウンドや新デザインのトレッドパターンを採用し、季節を問わず安全性、機能性、利便性を追求している。

販売目標について尋ねたら、他社を含めた国内オールシーズンタイヤ市場の伸び率以上を販売することが目標であり、「我々の推計では毎年120~130%の伸び率があり、当社ではそれを上回る販売実績を達成しています」との回答だった。また、クロスクライメートシリーズは、株式会社カービュー運営のクルマSNSサイト「みんカラ」が集計するランキング「パーツオブザイヤー」のオールシーズンタイヤ部門において、2019年、2020年と2年連続1位、2021年は殿堂入りを果たし、2022年上半期でも1位を獲得している。

なお最新ラインナップとして、2022年は「クロスクライメート2 SUV(8月上旬)」、バン・ライトトラック用「アジリス クロスクライメート(9月上旬)」、キャンピングカー専用「クロスクライメート キャンピング(10月中旬~)」を発売しており、積極的にオールシーズンタイヤを訴求していることがわかる。

性能面の認知度を高めたい

今後の見通しとしては、「ヨーロッパでは過去10年間オールシーズンタイヤの販売実績が伸び続けており、同じように日本でも拡大は続くのではないかと考えています。日本での市場規模はまだまだ小さいですが、オールシーズンタイヤという言葉の認知率は年々上がっています。言葉は知っているが性能はよくわからないという声が多いため、まずは販売店様向けに積極的に説明を行っていきたいです」とコメント。しかしながら、オールシーズンタイヤの走行性能を体感できる試乗会を実施するのは容易ではないことから、ヘッドマウントディスプレイを活用し、VRで雪上走行を疑似体験できる取り組みを開始し、販売店からは好評を得ているという。

また、自動車メーカーにおけるオールシーズンタイヤの純正採用について、日本ミシュランタイヤの現状を尋ねたら「クロスクライメートシリーズは、新車購入時の純正オプションタイヤとして選択頂けますが、国内で新車購入時に装着されているOEタイヤとしての採用はまだありません。今後国内でオールシーズンタイヤの認知が進み、自動車メーカーが開発する新車のコンセプトや車両のポテンシャルを発揮するタイヤとして、オールシーズンタイヤがマッチすれば、OEタイヤとして採用が増えていく可能性はあるのではないでしょうか」との回答だった。

日常的に積雪路や凍結路を走行する場合は、当然ながらスタッドレスタイヤ装着が必要となる。その点を理解した上で、非降雪地域で暮らす自動車ユーザーの走行環境と、オールシーズンタイヤの特徴が合致するならば選択肢のひとつとして検討する価値はあるだろう。

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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