アフリカの自動車産業、地域ごとの市場特性とビジネス展開のポイント…豊田通商 渡邊剛氏[インタビュー]

アフリカの自動車産業、地域ごとの市場特性とビジネス展開のポイント…豊田通商 渡邊剛氏[インタビュー]
アフリカの自動車産業、地域ごとの市場特性とビジネス展開のポイント…豊田通商 渡邊剛氏[インタビュー]全 1 枚

来たる3月25日、オンラインセミナー「アフリカの自動車業界最新トレンド~巨大な可能性を秘めたインドの次の市場とは~」が開催される。セミナーに登壇するのは、豊田通商株式会社 アフリカ本部 モビリティサービスグループ グループリーダー 兼 Mobility 54 Investment SAS CEOである渡邊剛氏。

渡邊氏は2009年に豊田通商に入社して以来、一貫して同社のアフリカ事業に従事し、豊田通商として過去最大のM&A案件となったフランスのアフリカ専門商社であるCFAO社(セーファーオー社)を買収、その後の企業融合を成功に導いた同社アフリカ事業のキーマンである。

今回のセミナーは以下のテーマで進められる。

1. アフリカの自動車産業の概要
2. 豊田通商の取り組み事例紹介
3. モビリティ54が狙う世界
4. 今後のアフリカビジネスのヒント
5. 対談・質疑応答

講演の後には、本セミナーのモデレーターであるスズキマンジ事務所 代表の鈴木万治氏を交えて、参加者からの質疑応答やディスカッションの時間が用意されている。

セミナーに先立ち、アフリカの自動車市場の概況や豊田通商の取り組みを渡邊氏に聞いた。

■中古車市場がメインとなるアフリカ自動車市場

今回のセミナーではアフリカの自動車市場を取り上げる。まずはアフリカの自動車市場について渡邊氏に聞いたところ、日本の常識からはかなりかけ離れた現地の事情を聴くことができた。

「アフリカの自動車市場は、全体としては新車が約110万台ほど販売されている市場です。これは日本の新車市場の約4分の1に相当しますが、一方でアフリカでは中古車市場が非常に活況であり、新車の5倍ほど、約500万台から600万台もの中古車が年間で取引されています。」

「そのため、部品や修理サービスにおいても中古車向けの需要が大きく、新車の純正部品よりも、市販品の部品の市場のほうが圧倒的に大きいという状況です。これがアフリカ全体としての自動車産業の特徴と言えるでしょう。」

いっぽうで、ひとくちにアフリカと言っても地域や国ごとに市場の特徴が大きく異なると渡邊氏は強調する。

「南アフリカでは他の先進国と同様、個人が自家用車を所有する形態がメインですが、一方で中央アフリカ地域では、自動車販売の大部分が法人や政府向けで、個人のユーザーは主に中古車を利用しています。」

「また法人向けと言っても、おもにマイクロバスや小型トラックなどで運送業や乗り合いバス事業を営む中小企業が中心です。」

「トヨタの新車販売においても、ハイラックスなどのピックアップトラックや、ランクル、プラド、フォーチュナなどのSUV、またハイエースやコースターなどが主流です。中古車市場でもピックアップトラック、バン、SUVが非常に多いですね。」

「一方で、アフリカ北部のモロッコ、チュニジア、リビアなどは欧州市場に近い位置にあり、乗用車を個人で所有するお客様が多い傾向があります。」

「またサブサハラ地域*でも、国によっては市場の変革が進んでいるところがあり、これがアフリカの興味深い側面の一つです。例えば、アフリカ西部のコートジボワールはかつて西アフリカの首都とも呼ばれた国で、その首都アビジャンでは中間所得層が増加しており、数ヶ月ごとに乗用車の数が急増している様子が目に見えてわかります。」

*サブサハラ地域:サハラ砂漠以南の地域のこと

「アフリカ東部のケニアも同様に発展しています。最近のケニア出張でも、個人のお客様が新しい車を所有し、個人で乗用車を利用する光景が増えていると感じました。」

「そのような状況で、弊社が扱うトヨタ車のマーケットシェアは、アフリカ全体では新車販売の約20%を占めています。このシェアはトヨタのグローバルなシェアと比較しても非常に高い水準にあります。」

「地域ごとの内訳としては、南アフリカでは約25%、サブサハラ地域では27-28%のシェアを有しています。一方で、アフリカ北部は欧州のPSAやルノーが強く、シェアは7%程度にとどまっています。」

■豊田通商の大きな決断

豊田通商はもともと、アフリカ東南部におけるトヨタ車の販売ビジネスを手掛けてきた。いっぽうでアフリカ西部については、フランスの商社CFAO(セーファーオー)が長年にわたりトヨタ車を販売してきた。

そこで、豊田通商は2012年に大きな決断をする。CFAOの買収だ。買収額は2345億円。同社内における最大の投資案件となった。

渡邊氏はその巨額買収案件を主導し、成功裏に導く。そしてそのままCFAOに5年間在籍し、買収後の企業融合のプロセスをリードした。

「そのときに一緒に駐在したのが、現在の社長である貸谷と副社長の今井*、そして私と、もう一人は経理部の者でした。豊田通商と言えばアフリカ事業として知られるようになったのも、CFAOの買収とその後の企業融合に成功したことが大きいと思っています。」

*豊田通商 取締役社長CEO 貸谷伊知郎氏/副社長 今井斗志光氏

「社長の貸谷が当時から大きな方針として徹底したのが、これは買収ではなくあくまでも融合であり、お互いはパートナーなのだ、ということでした。これを我々はトリコロール戦略と呼び、これを徹底したことが、買収が成功した大きな理由だと思います。」

■リープフロッグをまさに実現

渡邊氏は現在、豊田通商のアフリカ事業を担当するとともに、現地のテック企業を中心に投資を行うベンチャーキャピタルを起ち上げ、その事業を担当している。その中でも注目の企業を聞いた。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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