“走りの良さ”に対するコスパが高評価、スズキ スイフトに特別賞…いいクルマアワード2024

スズキ スイフトを開発した、商品企画本部 四輪商品第二部 チーフエンジニアの小堀昌雄氏
スズキ スイフトを開発した、商品企画本部 四輪商品第二部 チーフエンジニアの小堀昌雄氏全 8 枚

自動車の整備板金や用品・部品販売、クルマ買い取り・中古車販売、ロードサービスなど、いわゆるアフターマーケットの現場で働く人々がプロの視点で選ぶ「いいクルマアワード2024」の各賞が、オートアフターマーケット連絡協議会によって3月5日に発表された。

選考はオンラインのアンケートで「コスパ」「トラブルレス」「リセールバリュー」「EV」のそれぞれの部門で際立った一台を選ぶというもの。アンケート期間は2023年12月1日から2024年1月31日。投票総数は4832票。8回目となる今年のアワードは3賞が用意され、大賞はトヨタ『プリウス』(新型)、特別賞はスズキ『スイフト』、そしてEV賞は日産『サクラ』が受賞した。

特別賞のスズキ スイフトの選考理由について、選考委員会は「価格の割に良いクルマとして多くの支持を集めたスイフトですが、スイフトスポーツの存在も大きかったようです。スポーツタイプの車両が高額になる中で、コンパクトスポーツとして良いクルマだけど価格は手頃だと大変評価され、今回は特別賞に選出しました」とコメントした。

受賞にあたって、新型および先代スイフトの開発を担当したスズキ 商品企画本部 四輪商品第二部 チーフエンジニアの小堀昌雄氏に話を聞いた。

スズキ 商品企画本部 四輪商品第二部 チーフエンジニアの小堀昌雄氏(右)とオートアフターマーケット連絡協議会 理事の中村秀隆氏(左)スズキ 商品企画本部 四輪商品第二部 チーフエンジニアの小堀昌雄氏(右)とオートアフターマーケット連絡協議会 理事の中村秀隆氏(左)

◆価格押さえつつも「乗って楽しいクルマ」に

スイフトに対する投票のコメントでは、コスパの良さを挙げる意見が多かったが、その内容を見ると、「安価なクルマなのに乗って楽しい」「価格のわりに走りのポテンシャルが高い」など、“走りの良さ”に対するコスパを評価するコメントが目立った。

このことについて小堀氏は、スイフトは自分の意のままに操れるクルマだからではないかという。

「自分が意図した通りに動く、操れるというところが、スイフトを支持していただくことに繋がっているのではないでしょうか。コントロールしやすい車というところは一生懸命作りこんでいますので、お客様に可愛がってもらうことに繋がっているのかなと思います」

スイフトの走りの良さは、歴代のスイフトが受け継いでいる特徴のひとつとして知られるところだろう。

小堀氏によると、昨年末にフルモデルチェンジした現行型は、それ以前の旧型からさらに進化しているという。

「先代のスイフトは、車重を軽くすることで楽しく運転してもらえるよう提案しました。その結果としてお客様から、運転が楽しい、コントロールしやすいという声をいただくことができました。新型スイフトでは、それに加えてよりよい運転の体験を提供するために、使いやすくて安心なADASや、室内の快適さもしっかりと進化させました」

◆スイフトスポーツを買う社員も多い

スイフトの運転の楽しさと言えば、やはりスイフトスポーツを外して語ることはできない。小堀氏は、スズキの社員のなかにもスイフトスポーツを買って楽しんでいる人が意外なほど多いと明かす。

「スズキの浜松の事業所では、車通勤の社員が多く、やはり経済的に便利な軽自動車で通勤している社員が多いんですが、その中に混じってスイスフトスポーツも結構見かけるんです。駐車場に行くと、こんなに増えたんだ…! ってビックリするほどです。身内の社員が喜んで乗るぐらいだから、きっとお客様も気に入っていただいているのかなと思います」

また小堀氏はスイフトスポーツについて、思い切った設計をしたクルマだと言及した。走行性能に大きく振ったことで、失ったものもありながら高い性能を実現したという。

「自分として一番こだわったところは、“こんなの作っちゃっていいの? ”と言われるほど、走りの楽しさに思い切り振ったクルマにしたというところです。スイフトスポーツの試乗会で世界各地をまわったのですが、皆さんクルマから降りてくるなり、『よくこんなに面白いクルマを作ったな』って握手してくれるんですよ。こんなことはこれまでにはなかったですね」

スズキ・スイフトスポーツ現行(6MT、2023年)スズキ・スイフトスポーツ現行(6MT、2023年)

◆基本の底上げで環境性能アップ

スイフトを支持する声の中には、燃費の良さを挙げる意見もあった。しかしながら、昨年末に登場した新型スイフトには、フルハイブリッドの仕様がなくなっている。

このことについて小堀氏は、新型の高効率3気筒エンジンとマイルドハイブリッドの組み合わせによる基礎的な燃費性能の底上げを図ったと説明する。

「先代のスイフトにはフルハイブリッドの設定があったのですが、どうしても車両価格が高くなるという悩みがありました。バッテリーやDC-DCコンバーター、高電圧ケーブルなど、我々自動車メーカーの努力だけではどうしようもない部分でコストが上がってしまうんです。そうなると、(車選びの)選択肢から外れる、という方は少なからずいるのではないかと。そのため今回は、新型の3気筒エンジンで基本的な燃費を底上げするというアプローチを採りました」

先代スイフトの4気筒エンジンから、新型スイフトは全車3気筒エンジン搭載となった。これに組み合わされるマイルドハイブリッドによって、さらなる効率アップと、極低回転域の振動を低減する工夫を施した。

「新型の3気筒エンジンは燃焼効率がものすごく高いのですが、3気筒なので低回転側で振動が伴う部分があります。そこをISG* で補っています。MTであればクラッチをつないだ瞬間、CVTであればクリープで動き出すあたりの領域をISGのモーターでしっかりとサポートしています」

* ISG:Integrated Starter Generator エンジン始動用のモーター(スターター)と、減速時のエネルギー回生(ジェネレーター)を兼ねたモジュールで、クランクシャフトに繋がっている。モーターは発進時のトルクをアシストする役割もある。マイルドハイブリッドによく用いられる機構

ISGは振動を感じさせない効果だけでなく、乗り味にも効いている。

「ISGのアシストのおかげで、アクセルを踏み出した瞬間に車がスッと前に行くように感じられます。それこそ自分が前に行きたいと思ったときに、車が即座に応えてくれる。こういうところが気持ちいい走りに繋がっています」

これまでのスイフトが大事にしてきた走りの良さを磨き上げながら、基本となるエンジンを刷新することで環境性能を底上げした新型スイフトは、これからも支持を受け続けることになりそうだ。

スズキ・スイフト新型スズキ・スイフト新型

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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