ダイムラートラックは9月13日、ドイツで開催された「IAAトランスポーテーション2026」に先立つ「ダイムラートラック・メディアナイト」で、電動化や水素、自動運転、ソフトウェアなど今後の商用車戦略を発表した。新型EV(電気自動車)トラックのメルセデスベンツ『eアクトロス・ローライナー』も世界初公開した。
◆トラック発明から130年
メディアナイトでは、ダイムラートラックのカーリン・ラドストローム社長兼CEOとメルセデスベンツ・トラックスのアヒム・プーヘルトCEOらが登壇。トラック発明から130年を迎えた同社の戦略、新製品・技術、デジタル化、自動運転、CO2フリー輸送などの進捗を説明した。
ラドストロームCEOは、企業戦略「ストロンガー2030」の実行状況を紹介した。三菱ふそうと日野自動車の統合によって設立された新会社「アーチオン」について、ダイムラートラックが約17億ユーロの現金収入を得たと説明。ダイムラートラックとトヨタ自動車はそれぞれ25%を保有し、戦略的株主として新会社を支援する。
また、新たなグローバルブランド「ダイムラートラック・ディフェンス」の設立も発表した。メルセデスベンツ『ゼトロス』などを軸に、同社の生産規模やサプライチェーン、サービス網を防衛分野で活用する。自律走行やコネクティビティ、ソフトウェアについても外部企業との連携を進める。

◆SDV、2026年末に実車で実証へ
デジタル化では、ボルボ・グループと共同設立した合弁会社「クアルトゥラ」の取り組みを紹介した。同社には16か国出身の130人以上が参加し、商用車向けSDV(ソフトウェア定義型車両)プラットフォームとOS(基本ソフト)の開発を進めている。
標準APIを使ってトラックにソフトウェア機能を展開できる環境を目指す。2026年末までにダイムラートラックの車両でクアルトゥラのシステムを実際に作動させ、最初の機能の実証を始める計画だ。
自動運転では、子会社トーク(Torc)が北米の長距離輸送向けシステムを開発している。ダイムラートラック・ノースアメリカがステアリングやブレーキなどに冗長性を持たせた車両プラットフォームを担当し、トークが「バーチャルドライバー」となる自動運転ソフトウェアを開発する。
トークは2026年末までに、安全運転担当者をキャブに乗せない「ドライバーなし」の公道走行を実現することを目指す。計画通り進めば2027年に最初の商業貨物輸送を開始し、2028年から規模を拡大する予定だ。
◆新型 eアクトロス・ローライナー 世界初公開
電動化では、新型eアクトロス・ローライナーを発表した。自動車工場などで使われる大容量輸送を想定したバッテリーEVトラックだ。
ベースとなる『eアクトロス600』は、2024年12月の生産開始以降、欧州の顧客による累計走行距離が1億6000万kmを超えた。メルセデスベンツ・トラックスは現在、航続距離や積載量、用途に応じて約40種類のeアクトロスを用意している。
eアクトロス・ローライナーは、ホイールベースを4mとし、バッテリーパック2基の『eアクトロス400』仕様と3基のeアクトロス600仕様を設定する。バッテリーを通常の横向きではなく縦向きに搭載することでシャシーを低くし、大容量トレーラーとの組み合わせに対応した。
フル積載時の航続距離は500km。CCS充電に標準対応するほか、2027年後半からメガワット充電を設定する。これを利用するとバッテリー残量10%から80%まで30分未満で充電できるという。受注は9月15日に開始し、本格量産は2027年第2四半期にドイツのヴェルト工場で始める予定だ。

◆水素トラック、2026年末から100台納車
同社はバッテリーEVと水素トラックを組み合わせる「デュアルトラック戦略」も継続する。プーヘルトCEOは、バッテリーEVを多くの輸送用途で効率的な選択肢とするいっぽう、長い航続距離や短時間での燃料補給が必要な大型トラック用途では水素が補完すると説明した。
燃料電池大型トラック『GenH2トラック』は、顧客による実証で約60万kmを走行した。IAAでは次世代GenH2トラックを世界初公開し、2026年末から100台の小規模シリーズを顧客へ納車する。第1号車は物流大手ダクサーが受け取る予定だ。
燃料電池では、トヨタがボルボ・グループとダイムラートラックの合弁会社セルセントリックへ参画する計画も説明した。トヨタは7月に正式契約へ署名しており、今後は3社が均等な株主となるとしている。
◆新型ディーゼルも最大4%燃費改善
いっぽう、内燃機関の改良も続ける。北米では2027年1月から新しい「デトロイトGen6」エンジンファミリーの納車を始める予定だ。
メルセデスベンツ・トラックス向けには、新世代「パワーライナー」を世界初公開した。改良した13リットルエンジン「OM470」「OM471」とトランスミッション、アクスルを統合したパワートレインで、従来世代に比べ最大4%の燃費低減を実現する。2027年4月から『アクトロス』と『アロックス』に搭載する予定だ。
安全技術では「アクティブ・クロス・トラフィック・アシスト」と「アクティブ・サイドガード・アシスト3」を発表。前者は高速で接近する車両やオートバイを検知し、必要に応じて自動緊急停止まで行う。後者は右左折時などに対向車を検知し、ドライバーが反応しない場合に自動介入する。2027年以降、メルセデスベンツのトラックなどに搭載する計画だ。

◆欧州の電動トラック「2%」に危機感
ラドストロームCEOは、ゼロエミッション商用車の普及を巡る欧州の政策にも言及した。2025年の欧州のトラック新規登録に占める電動車の割合は2%にとどまるいっぽう、EUの2030年CO2目標を達成するには、2030年までに新規登録トラックの約35%をバッテリーEVまたは水素車にする必要があるとの見方を示した。
同社は普及を阻む要因として、充電・水素インフラとディーゼル車とのコスト差を挙げる。インフラ整備の加速やゼロエミッショントラックの経済性を高める施策を各国政府とEUに求めるとともに、インフラなどの整備状況に合わせた重量車向けCO2規制の見直しも訴えた。
ダイムラートラックは今回、ディーゼルの高効率化からバッテリーEV、水素、自動運転、SDVまで複数の技術を同時に進める方針を示した。
【全文PDFプレカン】Daimler Truck Media Night
以下の全文PDFは、記者会見やイベント講演の取材音声をもとに文字起こしを行い、編集者が確認と修正を入れたドキュメントです。
●登壇者
Karin Rådström(President & CEO of Daimler Truck Holding AG)
Achim Puchert(CEO, Mercedes-Benz Trucks)
Dennis Kinzelmann(CEO, Daimler Truck Defence)
Tilman Morlok(Project Leader Mercedes-Benz eActros)
Stefan Hohn(Chief Development Officer Dachser)
Tobias Wagner(Elektrotrucker)
●目次
オープニング映像:前進のフィロソフィー 1:00 p.4
CEO挨拶:130年の歴史と戦略「Stronger2030」 3:47 p.5
新事業・防衛部門:Daimler Truck Defenseの設立 5:15 p.6
デジタル化・SDV:QuarturaジョイントベンチャーとSDVプラットフォーム 10:07 p.7
自動運転:Torcによる北米長距離輸送の自動化 11:49 p.8
北米市場:第5世代Cascadiaと新デトロイトエンジン 13:52 p.9
メルセデス・ベンツ トラックスのビジョンとグローバル展開(Achim Puchert登壇) 19:06 p.11
EVポートフォリオ:eActros LowLiner発表と電動化ラインナップ 22:16 p.13
水素トラック:GenH2 Truckの進化とCellcentric 27:18 p.15
安全性・サービス・デジタルソリューションの強化 31:15 p.17
欧州政策への提言:ゼロエミッション輸送普及に向けたインフラ整備と規制見直し 54:12 p.19
クロージング:130年の歩みと未来への決意 59:52 p.22
★全文PDFプレカンの閲覧・ダウンロードには、ビジネス会員への登録が必要です。
- プレミアム/法人/スタンダード会員:本数無制限でダウンロード可能
- 無料会員:ビジネス記事の閲覧および全文PDFのダウンロードを合わせて、毎月最大3本まで利用可能



