アイシングループがeAxle試作品などの新技術試乗会を開催

ハイパワーeAxleが搭載されたテスト車両
ハイパワーeAxleが搭載されたテスト車両全 8 枚

アイシングループは9月19日、北海道のアイシン精機豊頃試験場において、一部メディアを招いた新技術試乗会を開催した。

【画像全8枚】

今回の試乗会は、同社が取り組む電動化技術、特にeAxleの紹介を中心に行われた。eAxleとは、パワートレインが一体化した電動車軸のことを指す。クルマの電動化において中心的な役割を担う重要なユニットであり、市場も急拡大している。

アイシングループはこの市場においても着実に実績を重ねているが、競合となる強力なメガサプライヤーも続々と参入している。

激化する競争環境において、トランスミッション開発でつちかった高精度のギア・ケーシング生産開発技術による高効率・低騒音・信頼性を活かした製品づくりをアピールした。

●アイシンのeAxleとは

アイシンは『プリウス』4WD のリア駆動用eAxleの生産実績があるが、さらなる差異化を図るため、デンソーと共同でBluE Nexus(ブルーイーネクサス)という合弁会社を今年4月に立ち上げた。両社の強みを持ち寄り、製品としてのeAxleの競争力強化を目指すものだ。

具体的には、トランスアクスル・モーター・インバーターのeAxle主要構成部品のうち、「アイシンがトランスアクスルを、デンソーがインバーターを、そしてモーターは共同で開発する」(説明員)という座組みで、eAxle全体としてのさらなる魅力アップをねらう。

また差異化要素としてもうひとつ、主要構成部品のモジュール化による柔軟な製品対応がある。「数種類のモーター・トランスアクスル・インバーターを自由に組み合わせ、車両への実装形態によってパワーやレイアウトをマッチングさせる」(説明員)とのことだ。

●ハイパワーeAxle

ブリーフィングの後は豊頃試験場に移動し、現在開発中の各種eAxleを中心に試乗の機会を得た。まず紹介するのはハイパワーeAxle。テスト車両の旧型ボルボ 『V60』のリアにハイパワー eAxleが搭載され、後輪を駆動する。前輪はV60のエンジンと駆動系がそのまま残されている。

このハイパワーeAxleはスポーティーなドライバビリティを狙ったもので、アクセルを踏み込んだ瞬間にガツンと後ろから押されるようなソリッドな加速を開始する。しかもノイズや振動は最小限で、強烈でありながら上質さを感じる加速だ。

eAxleでの加速を試した後に、エンジンでの加速を試したのだが、ハイパワーeAxleを体験した後だと、エンジンの加速感は、低回転領域でアクセルペダルの踏み込みにリニアに反応してくれないもどかしさを感じた。回転が上がってくるとそれにつれてパワーも出てくるのだが、エンジンの振動やノイズもあってラフな感覚があり、eAxleと比べると決して上質と言えるものではない。

このように2種類のパワートレインを同時に体験することによって、電動化のメリットを鮮明に感じるとともに、ハイパワーeAxleの大きな可能性を五感で理解することができた。

●変速機構付eAxle

次に試乗したのは変速機構付のeAxle。トラックやバスなどの大きな駆動力が必要な商用車を想定して開発が進められているもので、低速ギアでの大きなトルクと高速ギアでのハイスピードを両立することを狙っている。

テスト車両のトヨタ『C-HR』には、eAxleが前後に装着されていた。双方を連携させることによって変速ショックを感じさせない制御をねらったものだ。電動パワートレインのメリットのひとつとして、出力を緻密に制御できることがあるが、これを利用し変速ショックを一切感じさせないところまで制御を追い込むことを実現した。

説明員によると、「80キロを超えたところで2速にシフトアップする」とのことだが、体感上はシフトショックをまったく感知することができない。また、「遮音対策をしていないため、変速時にわずかに金属音が聞こえる」とのことであったが、かなり意識を集中しても変速のタイミングを感じることは結局できなかった。

●電動化のもうひとつの主役

アイシンはハイブリッドトランスミッションに関しても多くの実績がある。代表的なものはプリウスの2モーターハイブリッド向けユニットであるが、今回展示されていたのは、欧州メーカーで主流の1モーターハイブリッドユニットだ。

PSA グループ向けに SUV 用の1モーターハイブリッドトランスミッションの供給が決まっており、シトロエン『DS7』のハイブリッドに搭載される。

欧州メーカーがラインナップを増強しているプラグインハイブリッド向けに、同様のユニットの市場が拡大すると見られており、この実績がひとつの足がかりになることが期待される。

●その他の技術開発

その他にも様々な試乗車が用意され、開発中の技術を体験することができたのだが、なかでも印象的だったのが、後輪を左右それぞれのモーターで駆動することで、トルクベクタリングによるレーンキープアシストを実現したテスト車両だ。

後輪左右のトルク差異によるレーンキーピングは、ステアリングに反力を感じさせないため、ドライバーにとって違和感なく進路の補正をすることができるもので、レーンに沿って何事もなく走っていくそのさまは、まるで見えざる手に守られてレーンをキープしているかのような安心感を感じられた。

ただ説明員によると、「この技術は開発の初期段階。自動車メーカーの反応は良いが、コスト面の調整もまだこれから」とのことであった。

その他にも、レクサス『UX』やトヨタ『RAV4』などに搭載されている発進ギア付きの CVTや、ルノー『メガーヌ』に搭載されたアクティブリアステアリング、レクサス『LS』 に搭載された車両運動統合制御『VDIM Step6』などを試すことができた。

トランスミッションやアクチュエーターといった、アイシングループが得意とする要素技術を発展させて、クルマの電動化においても守備範囲を広げようとする同社の可能性を感じることができた試乗会であった。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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